随分ご無沙汰してしまいました。久しぶりにブログを書いています。数ヶ月間も更新していない
にもかかわらず、毎月1000回近いアクセスがあることに感謝しています。今日は、最近書いた
私のメルマガ「なかよし情報」で紹介して反響のあったエッセイを掲載しますので、お楽しみくだ
さい。
・ヒツジグサ 5月15日 筑紫野市 武蔵寺の心の字池にて撮影
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★ 6年間待っていたメール
私は不登校当事者の方が悩みや苦しみを分かち合い、あるいはその体験談を聴きながら自
らのこれからを考える場をいくつか担当しています。長い場所では、もう12年にもなります。そ
の間に本当に色々な方が参加し、そこで勇気や希望をもらって出発していく姿を見てきました。
そういう方々の幸せになっていく様子を見るのが、私の幸せでもあります。
その会場の一つに6年間通われ続けているAさんの話です。中学校1年生の時に息子さんが
不登校になり、最初は無理やり学校に連れていったり、やかましく言ったりしていましたが、全く
言うことをききません。そのうち部屋にこもってしまうようになり、とうとう話も出来なくなってしまい
ました。Aさんは困り果ててやって来られました。
最初のうちは、どうしたものかという不安から泣いてばかりおられました。自らの悩みを語ったり、
他の参加者の話など聴きながら、少しずつ不安や不満が軽減していったようです。不登校に
関するセミナーや講座などにも積極的に参加され、不登校についての正しい理解や姿勢など
が進むにつれて表情も明るくなられていきました。
しかし、息子さんは余程のことがあったのか、口をきいてもくれません。顔も合わせたくないらしく、
Aさんが寝静まったのを確認し部屋から出てきてはAさんが準備した食事を食べていたそうです。
中学3年間はまったく登校できませんでしたが、高校は通信制の高校に入学することができ
登校もするようになりました。と言うのも、父親のBさんとは色々なことが話せていたからです。
Aさんは息子さんのことについては全て夫のBさんから聴いていましたので、高校進学について
も心から喜んでいました。しかし、そんなことも本人と話すことは叶わないままでした。
高校の3年間、Aさんは息子さんのためにお弁当を作り続けました。自分の気持ちを伝えよう
と息子さんの部屋の前に手紙を置いたり、同じ屋根の下に住んでいるのにメールで話しかけた
りしましたが、何の返事もありません。それでもAさんは“きっとまた話し合えるようになる”と願っ
てあきらめませんでした。
この春、息子さんは他の地方都市にある大学に入学。家を出ての一人暮らしが始まりました。
引っ越しや入学もお父さんに手伝ってもらい、Aさんとは口もきかない状態のまま家を出ていき
ました。Aさんは初めての一人暮らしの息子さんのことを思ってメールを打ちました。自分がどん
なに息子さんのことを大切に思っているかを伝えようと、いつものようにダメ元の気持ちで。
ところが、なんと!そのメールに息子さんから「元気にしてるよ」のメールが返ってきたのです。Aさ
んは6年間、息子さんからのこの一言を待ち続けてきました。「おはよう」でもいい、何でもいい、
母親の自分に声をかけてもらうことを。何度もあきらめかけては、きっと思いは伝わるときがくると
信じて、手紙やメール、お弁当づくりを続けました。そして、とうとう、やっとその日が来たのです。
わずか数文字のそっ気ないメールでしたが、Aさんにとって、どんなに嬉しいメールだったことでし
ょう。
そのことを嬉しそうに、目に涙を浮かべて話されるAさんの様子を見ながら、本当に良かったと
私も思わず目頭が熱くなりました。息子さんとの新しい関係は、始まったばかりです。これから
も色々なことがあるでしょうが、これまでのことを思えば、何でも出来るように思います。
私が二十年近く、このような活動を継続出来ているのは、Aさんのように幸せになっていく場面
に立ち会わせてもらえるからです。人が幸せになっていくのを見ることは、こんなに嬉しいことは
ありません。自他一体の世界の顕現ではないでしょうか。Aさんから、喜びのエネルギーをもらっ
て私もまた一歩前に進みます。Aさんおめでとう!そしてありがとう!
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森の幼稚園 in デンマーク 訪問記(その2)
先週に続いてデンマークの森の幼稚園についてのレポート(その2)をご紹介し
ましょう。
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準備の歌と体操が終わると、子どもたちはそれぞれ自分の好きな遊びをしようと
お目当ての道具や場所に一目散に駆けていきます。この日は少し寒かったので、
ボーイスカウト協会から借りている丸太小屋では、寒くなったら温まれるように
焚き火が用意されていました。
でも子どもたちは元気よく遊びまわっていました。木登りしている子、手押し車
を椅子のようにして体をスッポリと包み込むようにして座っている子、かけっこ
して回る子など、楽しそうにそれぞれ思い思いに体を動かしています。
★手押しの一輪車を椅子代りにして座って何か話している女の子たち
空き箱や木の枝などを集めて、秘密の基地のようなつもりで遊んでいる男の子た
ちもいました。また寒くて丸太小屋の焚き火に集まっている子もいました。幼稚
園の職員さんは、子どもが何かを求めているときにはそれに応えますが、それ以
外は子どもの自主性に任せているので、ゆっくりとした雰囲気で子どもたちを見
守っています。
★戦車のつもりなのか、樹の枝を大砲のようにして遊んでいます。
子どもたちの遊んでいる様子を見た後は、広場の端にあった丸木小屋で焚き火を
囲んで幼稚園の職員へのインタビューの時間です。園長はローネさんという初老
の女性でデンマークで森の幼稚園の活動が始まった頃から関わっている人です。
もう一人はイギリス人のアンドリューという男性補助員さんでデンマーク人と結
婚して、その縁でこの幼稚園に関わっているとのことでした。
★木登りの好きな男の子 先生たちは遠くで見守っていました。
インタビューで答えて下さった内容を箇条書きにすると以下のようになります。
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○この幼稚園ではコムーネと小学校とが協力して、幼稚園と小学校合同の講習会
などをして、シームレスな(切れ目の無い)子どもたちの育ちへの支援を行っ
ている。
○森の幼稚園で大事にしていること
・子どもたちが共同生活を送れるように社会的な態度を身に付けること=協力
すること、なかよくすること
・体のバランスをつけること
・自然を通して五感を使って物事を理解する力をつけること
・おもちゃが無い場所=自分たちで見つけたり、考えたりする力をつける
・大人が少ないので、子どもが子どもでいられる=子どもが子どもであること
が一番大切
○屋外で体を動かすことは脳の働きをよくする=学校の学習の準備のための脳の
準備になる。※i−Padよりもはるかに効果的
○子ども同士のケンカへの対応:ケンカしたことで仲たがいしないように両方の
言い分を聴いて、仲良くするための提案を先生が双方にして仲良くする。喧嘩
しても罰は無い。みんなで「仲良く」するという指導をしている。
★園長先生の傍に寄っても、大人たちの話を遮ったり邪魔したりしない。
○この幼稚園には現在26名の子どもが通っている。事務所や丸太小屋は自前の
ものではなく、国やボーイスカウトの協力を得て貸してもらっている。職員は5名
(4名がペタゴー、1名が補助員)。園長のローネさんと補助員のアンドりューさん
は週37Hのフルタイムだが、他のメンバーはパートタイマーで対応している。森
の中では2人ずつペアで子どもたちの見守りをしている。
○市からの補助は子ども一人当たり5000クローネ(10万円)。職員の給与は市が
全額負担している。
○森の幼稚園は都市化や過疎化の関係で各コムーネ(市)に1園程度まで減って
いる。全国に100コムーネくらいあるので、それくらいの森の幼稚園があるので
はないか。
○森の幼稚園職員になりたいという希望者は結構いる。ペタゴー(早期教育支援
員)も人気が高いのだが、給料がよくないのが難点だ。森の中が職場なので体
力も必要。
★大人たちの話を邪魔しないで、職員のそばにおとなしく座っている。
このインタビューの時間に何人もの子どもたちが私たち大人の会話しているところ
に来ましたが、会話の邪魔をすることもなくおとなしく、私たちの様子を見ていた
のには驚きました。自分に先生などの気を引こうとしたり、て、会話を遮ったりし
ないのは、「聴く」という姿勢がこの幼児期から備わっているからではないでしょ
うか。
子どもたちの天真爛漫な様子と、この節度ある態度は森の幼稚園だけでなく、デン
マークにおける子どもの意見が尊重されるという大人への信頼感が根底にあるから
ではないかと思いました。
森という自然が子どもたちに言葉では伝えきれない大きなもの、豊かなものを伝え
てくれているように思いました。幼児期における自然の中で思い切り遊んだ経験は
彼らが大人になってからの社会づくり=人と自然との共生の社会観へと反映するこ
とでしょう。
【参考文献】
?森の力〜育み、癒す、地域をつくる 浜田久美子著 岩波新書1153
★第1章に「森の幼稚園は五感のゆりかご」で森の幼稚園が紹介されています。
?デンマークの教育に学ぶ 江口千春 著 ダム雅子 訳 かもがわ出版
★デンマークの幼児教育から高等教育までを写真をふんだんに取り入れて紹介。
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【お知らせ.1】デンマーク研究会
●私たちの暮らしの中に幸福度世界一のデンマークの哲学をどう活かすか、そし
て私たちの暮らしの幸福度がどうしたら高まるのか、共に考える場です。
●対象者:デンマークの「幸福度世界一」に興味のある方なら誰でも参加OK!
★主催:教育文化研究所
◎講師:長阿彌幹生(教育文化研究所 代表)
◎場所:福岡市人権啓発センター(ココロンセンター)
(福岡市博多区下川端町3番1号 博多リバレイン・リバレインオフィス10階)
※博多座の隣のビルです。地下鉄中洲川端駅に繋がっています。
◎日時:1月28日(火)18:30-21:00
◎参加費:500円
◎お問合せ:教育文化研究所 nakayoshi@kyouikubunka.com
【お知らせ.2】デンマーク北欧マンス講演会
第1部 講演:創業理念を今に伝える
・講師:川原 正孝 氏
(ノルウェー在福岡名誉領事、(株)ふくや代表取締役)
辛子明太子を作り上げた創業者の故川原俊夫氏の生誕100年を記念して
TVドラマ「めんたいぴりり」がTNCで放映されましたが、博多を代表す
る老舗の創業者の人となりが興味深く描かれており大変好評を博しまし
た。このドラマをもとに創業者の理念を、また水産国でもあるノルウェ
ーと明太子の関係など語って頂きます。
第2部 報告:デンマーク研修ツアー2013 レポート
・報告者:重松 勲 氏(福岡デンマーク協会運営委員)
昨秋、教育文化研究所の「デンマーク研修ツアー2013」に参加され
て、幸福度世界一のデンマークの教育や福祉の現場を訪れての感想や発
見などを報告して頂きます。
・日時:2月8日(土)14:00−15:30
・会場:大名クロスガーデン(ジョウキュウ醤油隣)
福岡市中央区大名1-12-7 Tel: 092-985-1001
・参加費:1000円
・主催:一般社団法人福岡デンマーク協会
・お申込み&お問合せ e-mail: info@fda-japan.com
【お知らせ.3】デンマーク講演:幸福度世界一の国デンマークから学ぶ
デンマーク研修ツアーを毎年企画。教育や福祉の施設を訪れデンマ
ークの人々方々との交流を行うなど体験型ツアーを行っています。
2014年秋にも開催予定。昨秋の教育文化研究所の「デンマーク研修
ツアー2013」で得られたデンマークの最新情報や、新しい発見などを
交えて、デンマークの幸福度について学び、それをどう私たちの日常に
活かすかを考えます。
長阿彌幹生のデンマーク読本
・講師:長阿彌幹生(教育文化研究所代表、福岡デンマーク協会理事)
・日時:2月15日(土)14:00−16:00
・会場:松楠居(しょうなんきょ) 福岡市中央区大名2-1-16(やぶ金2階)
福岡市中央区大名1-12-7 Tel: 092-985-1001
・参加費:500円(お茶付き)
・主催:一般社団法人福岡デンマーク協会
・お申込み&お問合せ e-mail: info@fda-japan.com
昨年の11月の初めに更新して以来、なんと2ケ月も筆不精をしてしまいました。
デンマークから帰国後、慌ただしい毎日だったわけではありませんが、何となく
義務感にかられて、このブログを書いている自分に気付いて、ちょっと間を置い
てみました。ようやく書きたくて書こうという気持ちになりました。
と言うことで、再開の記事はやっぱり昨年11のデンマーク研修ツアーからにし
ました。今回は12名の皆さんと一緒にデンマークに行ってきました。今回のツ
アーでは初めて「森の幼稚園」を訪問しました。デンマークから始まり、世界中
に広まった「森の幼稚園」とはどういう場所なのか?本やテレビなどで事前に
知っていたつもりでしたが、やはり実際に行ってみると、「百聞は一見に如かず」
で、その素晴らしさに感動しました。では、さっそく「森の幼稚園の訪問記」をご
紹介しましょう。
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今日は11月12日火曜日。朝から曇り空で少し小雨がパラついているが、寒くは
ない。コペンハーゲンから北に20kmくらい行ったところにあるホースホルム市
の森の幼稚園を訪問した。
私のツアーは出来るだけ公共交通手段を使って移動するようにしている。その
方が、デンマークの暮らしぶりを肌で感じることができるからだ。今日も定宿に
しているホテルからコペンハーゲン中央駅に向かい、。地下鉄でノアポート駅ま
で行き、そこからバスに乗り変える。40分ほど乗車し、バス停から15分ほど歩
いて森の幼稚園の事務所に8:50着。住宅地と森とが接する場所にある。幼
稚園名は「Koglerne」。
この幼稚園は親たちが組合を組織して、市に働きかけて運営費を予算化してコム
ーネ(市)と共同で運営している。親たちはバザーをしたり清掃をしたりで行政にお
任せではなく、自分たちで出来ることはするようにしている。
森の幼稚園はまさしく森自体が幼稚園になっている。但し、事務所や強い風雨の
場合に子どもたちが過ごす小さな部屋などのある建物と着替えや道具置き場の小
屋(昔は家畜小屋)がある。
森の幼稚園の日課は8:00-9:00 集合 9:00から森へ。11:30森で昼食。13:30まで
森で遊ぶ。14:00-16:00 建物の中で親たちが迎えにくるまで音楽活動等で過ごす。
私たちが到着したときは、まさに森の出かける直前だった。親たちに送られてきた
子どもたちが雨具に着替えるところだった。
少々の雨なら森で過ごすのだそうだ。出発の時は保育士やペタゴー、補助職員と
一緒に固まって歩いていた子たちが、森の中の道に入った途端に元気よく、遊び
場のある森の中の方目がけて走り始めた。時々、適当なところで止まっては後続
の人たちを確認しては進んでいる。一見、自由奔放なようだが、ルールはよく身
についていると感じた。
一人の職員が枯葉の下から蛾を見つけ出して、小さな男の子に手のひらに乗せ
た。こんなところにも命があるんだねと伝えるかのように優しく話していた。その子
はじっと不思議そうにこの蛾の様子を、どこかに飛び去っていくまで見つめていた。
細やかな気持ちの通い合いを大切にするかのような場面だった。
森の中を500mくらい歩くと丸太小屋のある場所にたどりつく。そこは広場になっ
ていて、子どもたちが思いっきり遊べるようになっている。遊び始める前に、まず
は円陣を組んで、歌を歌いながら体操とリラックスを兼ねた遊戯をする。この歌も
とても楽しい歌だった。子どもたちはこの歌を歌うことで、これからの遊びに入って
いく体と心の準備をしている。私も一緒に彼らと歌っていると、体の中から温かく
楽しくなってきた。
さあ、これからどんな遊びの時間が始まるのだろうか。楽しみだ。(次回に続く)
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「長阿彌幹生のデンマーク読本」(500円) 好評発売中!
【デンマーク読本購入方法】
●購入申込:?メール:nakayoshi@kyoikubunka.com
?電話・ファックス:092−923−9339(教育文化研究所)
●連絡内容:?お名前(フリガナ) ?郵送先住所 ?電話番号 ?購入冊数
●郵送料:4冊まで(100円)※それ以上は冊数により異なります。
●支払方法:お近くの郵便局で同封の払込取扱票にてお支払い下さい。
※払込手数料120円が別途必要です。
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今日は、天拝山で最近であった美しい虫たちを紹介しましょう。まずは玉虫(タマムシ)
です。天拝山からの下山の途中に枝に止まっている彼を見つけました。朝方、気温が急
に冷え込んだので動きが鈍く、私が掌に乗せてもじっとしていました。やがて私の温も
りで体温がを上昇したのでしょうか、少しずつ動き始めました。
★本当に見事というしかない美しさです。9月5日午前8時半頃撮影
それにしても何という輝きなのでしょうか。緑色を主体にして、黄金や赤銅などの金属的
な光沢を発しています。精巧に造られた金属模型のような感じすら受けます。タマムシの
羽根は長く色が変わらないので、昔から装身具に使われていたそうです。この虫の羽根を
集めて造られた厨子(ずし:仏像,仏画,舎利,経典などを安置するいれもの)が法隆寺
正倉院に宝物として所蔵されています。国宝の「玉虫の厨子」です。昔の人もこの色に魅
せられたのでしょうね。私もすっかり見とれて時間の経つのも忘れてしまいました。
さて、次はナミハンミョウです。この季節になると、天拝山の石楠花谷の入口に砂防堤を
建設するためにコンクリートの傾斜の急な道路が15mくらい設けられましたが、その面
に沢山います。
★やっと撮れました!敏捷でなかなか撮影できませんでした。9月8日午後3頃撮影
以前から写真撮影を試みるのですが、近づくと敏捷に飛び去って、なかなか撮影させてく
れません。昨日はコンクリート面に止まっているこの虫をズームで撮影することが出来ま
した。頭部は金属光沢のある緑色、前足はビロード状の黒紫色に白い斑点があり、前胸
部と前足の中央部に赤い横帯が入っていて、体の下面は金属光沢のある青緑色。まる
で美術工芸品のようですね。
★工芸品のようなナミハンミョウの色彩 9月8日午後3頃撮影
写真を撮影してみて、何となくピントが甘いのです。もちろん私の写真の腕のせいもある
のでしょうが、それだけではないように思えるのです。おそらく、ナミハンミョウの美しい色
が羽や体の表面から発せられているのではなく、少し深い部分から発せられているから
ではないでしょうか。もう少し、この虫のことを調べてみると面白いことが分かるかもしれ
ませんね。美しい色の謎に迫ってみようと思います。
お次はアキアカネです。漢字で書くと「秋茜」。いい名前を付けたものです。夏の終わり
から秋の訪れを感じるこの時期に飛び始めるに相応しい名前です。そのアキアカネが
丁度今頃から咲き始めるミズヒキソウ(水引草)に止まっていました。
★水引草で羽を休めるアキアカネ 9月8日午後3時15分頃撮影
ミズヒキソウはその名と通り、水引(みずひき)に似ているからその名がついたようです。
水引は贈答品や封筒に付けられる紅白の飾り紐のことです。細く伸びた茎に表が赤、裏
が白い小さな花が交互に咲いていて、水引を思わせます。全体を撮るとそれぞれの花が
小さくで何の写真か分かりにくく、接写するとこの水引状の全体の様子が分かりにくいの
で、なかなか撮影しにくい花です。でも、この日はアキアカネがこの花に止まってくれま
したので、もう迷うことなくパチリ!
自然の造形はいつも私を驚かせ、感動させ、喜ばせてくれます。その姿を見る度に「妙」
という字を思い浮かべます。「妙(みょう)」とは辞書では「言うに言われぬほど優れている
こと。またその様。」と書かれていますが、まさしく妙(たえ)なる様には、毎回「あなたに会
えて良かった!」と心から思います。
今回も出会った花々、虫たちに言いました。「ありがとう!」「また会いましょう!」
昨日から朝の空気が夏の朝独特のひんやり感になってきました。朝の山登りはこの温度
と湿度がとても快適です。ウグイスも気持ちが良いのでしょうか、「ホーホケキョ」と
歌っていました。夏の暑さに耐えている植物たちに朝露はほっとする清涼剤になってい
るのではないでしょうか。
★ツユクサ 7月16日午前7時過ぎ 天拝山石楠花谷にて撮影
椿の実が艶やかです。この実の中で椿油が蓄えられつつあるのかと思うと、その収穫が
楽しみになります。障害者施設での椿油づくりに関係するようになってからは、椿の実
を見ると、その向こうに色々なものが見えるようになりました。椿油との人間の歴史や
暮らしなど。私自身も椿油を髪の手入れなどでは欠かせないものとして使っています。
★ツバキの実 7月16日午前7時過ぎ 天拝山登山口にて撮影
秋になると実が弾けて、茶色の種子が地面に転がります。今年もそれを集めて施設に送
ることにしましょう。どれくらい集まるかなあ。今から楽しみです。
お待たせしました!待ってなんかいなかった?そうかも知れませんね。私は誰がこのブロ
グを読んで下さっているのかを知りませんから。でも、毎日数十人の方々が訪問して下さ
っていますので、その中にはそういう方もいらっしゃるのでは?
時々、「“なかよしブログ”の更新を楽しみにしています」とメールをくださる方もおられます。
又、あまりに更新の間隔が空くと、私が病に臥せっているのではないかと心配メールを送
って下さる方もおられます。本当に嬉しいし、ありがたいなあと思います。
★ヒツジグサ(睡蓮) 6月17日(月)午前8時半 武蔵寺(筑紫野市) 心の字池にて撮影
前回、ブログを更新したのが5月8日ですから、なんと!1ケ月半ほど空いてしまいまし
た。病に臥せっていたのではなく、ちょっと慌ただしくしていただけですのでご安心下さい。
と言うのも、九州で初めてという官民共働での催しなどに取り組んでいました。それも先
週無事終了し、多くの方々と共に語り合い、考える機会になったのではないかと思ってい
ます。
さて、今日は「梅雨」という言葉の自分流解釈を書きたいと思います。まずは一般的に解
釈されているものを紹介します。インターネットで調べると以下のようになっています。
・漢字表記「梅雨」の語源としては、この時期は梅の実が熟す頃であることからという説
や、この時期は湿度が高くカビが生えやすいことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれ、こ
れが同じ音の「梅雨」に転じたという説、この時期は「毎」日のように雨が降るから
「梅」という字が当てられたという説がある。普段の倍、雨が降るから「倍雨」という
のはこじつけ(民間語源)である。諸説が名称の語源は定かではない。
★地面に落ちた梅の実 甘酸っぱい匂いがしました 6月17日撮影 紫藤の滝付近で
そこで私流の解釈なのですが、「梅雨」とは「熟した梅の実が長雨によって落実する頃」
なので名付けられたのではないかと思うのです。と言うのも、先日、天拝山の麓の紫藤
の滝という場所の近くで、この雨に打たれて落実した梅の実をたくさん見かけました。
地面に落ちている梅の実から発酵した甘酸っぱい匂いが漂っていました。
近くの渓流に沢山梅の実が落ちています。流されるのか、このまま腐るのか、はたまた
虫に食べられるのかは分かりませんが、いずれにしてもまた自然の輪廻の世界に戻って
いきます。私は冬の終わりに膨らんだ蕾の頃から、早春の開花、初夏の結実までをずっ
と見守ってきました。そして今、梅雨の雨の中で熟した実を地面に落として、再び土に
還っていく姿を見ています。自然界の命すべての一生を、この梅の実が眼前で顕してく
れているように思えます。
★渓流に落ちた梅の実 6月17日撮影 紫藤の滝付近にて
そんなことを思いながら、この梅の実を撮影していましたら、私の頭上でアオバヅクも
この様子を静かに見ていました。毎年、この渓流のすぐそばの大きなクスノキに営巣
し、雛を育てています。今年も律儀に戻ってきました。この日は、彼と一緒に梅の実を
見ていたように思えました。でも、彼は夜行性なので眠そうな目をしていましたが・・・。
★私の方を眠そうな目で見つめるアオバヅク君 6月17日撮影 武蔵寺境内にて
上の写真は植木方面から八方ケ岳を見たときの眺めです。3つの山が並んで見えます。
中央の山が八方ケ岳で、右の山は大分県日田市の酒呑童子山(シュテンドウジヤマ・
1181m)で、左の山は国見岳(クニミダケ・1018m)です。
見るからに古い火山だとわかる山容で、ゴツゴツとした岩や切り立った崖などが主峰近く
を取り巻いています。浸食が進む度にがけ崩れなどを起こしているようです。でも、浸食
のスピードはゆっくりと進んでいるので、頻繁に災害が起きているわけではありません。
★いくつかの峰が分かれていますが、中央の丸い部分が最高峰です。
登山ルートはいくつかあるようですが、今回のルートは矢谷キャンプ場からのコースです。
迷うようなところは無く、道なりに標識を見ながら2時間ほど歩けば頂上でした。林間で
は、ウグイスが美しい声で疲れを癒してくれました。
★イヌビワの若葉:まるで宙に浮かんでいるように見えますね。4月13日10:30頃撮影
登山道に淡いピンクの花弁が散っています。頭上を見上げると、木立の間からヤマザク
ラが咲いていました。里ではソメイヨシノなどの桜はすっかり散ってしまいましたが、こ
の山間では植林の杉たちの間に控え目に咲いています。この奥ゆかしさがいいですね。
★若葉を放射状に拡げたばかりのヤマソテツ 4月13日10:45頃撮影
山頂からは“360度のパノラマ”の筈なのですが、この日は快晴で無風だったので、す
っかり春霞に覆われてしまって、残念ながら、その眺望を楽しむことは出来ませんでした。
ぼんやりと霞んではいましたが、南からぐるっと目を見張りながら眺めてみましたら、阿
蘇五岳、祖母山と傾山、九重山群、万年山などがうっすらと霞み越しに見えました。雲仙
岳や多良岳などの長崎県や天山などの佐賀県の山並みなど、本来山頂から見えるはず
の山々を見ることは出来ませんでした。残念!次回は秋以降の空気の澄んだ時期に登
ってみようと思います。
下山途中の展望台から登ってきた渓谷を見おろしました。渓流は木々の下に隠れて見えま
せんが、渓谷全体を覆う森は、まるで紅葉の秋のような風情でした。新緑といいますが、
芽生えたばかりの葉は朱色や濃い茶色などをしたものも多く、それらの色が新緑と交り合
い、錦絵のような絢爛な様相を呈していました。
★まさしく“山が笑う”という表現がぴったりの様子です。この色が5月に近付くにした
がって、緑一色に変化していくのも、この時期の山歩きの楽しみでもあります。
登り始めたのが10時半。2時間で頂上着。昼食休憩を1時間。下山が2時間ということで
全行程5時間のゆっくり登山。萌え出る自然の様子を堪能してきました。今頃はそろそろ
シャクナゲの花たちが渓谷のあちらこちらで淡いピンクの花を咲かせていることでしょう。
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★2日前に咲いていた野草を紹介しましょう。
私のホームグラウンドと呼ぶべき「天拝山」で、一昨日咲いていたムラサキサギゴケ
(紫鷺苔)です。筑紫野市の名に相応しい“紫”色の花です。
この花は、毎年この時期になると地面に這うように咲きます。紫色をしていて鷺の立
ち姿に似ていて、かつ苔のように地面に貼り付いているのでこのような名前が付いて
のではないでしょうか。私自身も地面に這 うようにして、花と同じ目線で撮影してみ
ました。
■お問合せ・お申込みは 西鉄旅行デンマーク研修ツアー係TEL:0942-33-1573
デンマーク2012研修レポート(その6)
毎年デンマーク研修ツアーを企画して希望者の方々と一緒に、デンマークを訪問していま
す。デンマークの文化や教育、福祉、暮らしなどを8日間にわたって視察し、日本に帰国
してからの自らの暮らしや仕事へ、デンマークの高い幸福度を具現化する知恵を活用して
います。昨年の11月のツアーの様子を連続して紹介しています。今回はデンマークの義
務教育を担う国民学校(0年生〜9年生)訪問パート2です。お楽しみ下さい。
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【11月14日(水)フナロック国民学校(オーデンセ市)視察レポート(その2)】
バウン校長に、今回のツアーの研修生から「モンスターペアレント」や議論が沸騰してい
る「教師の体罰」についての質問が次々と出されました。以下はバウン校長と研修生との
質疑応答の内容です。
質問1:モンスターペアレントはいますか?そういう保護者にはどう対応していますか?
回答1:出された不満や要求については、徹底的に話し合います。私たち教師は教育のプ
ロフェッショナルです。教育について、教室の運営については自信を持って行っ
ていることを伝えていきます。それよりも何よりも、保護者との関係が日常的に
行われているかどうかが、そのような事態になるかならないかに繋がっているの
ではないでしょうか。1クラス24名平均なので、教師が子ども一人ひとりにつ
いて良く把握できます。同時に保護者とのコミュニケーションも日常的に行われ
ていますので、大問題になる前にお互いの意見交換をすることで、意思の疎通が
図れます。
★教室の様子:1クラスの児童数が平均20数名程度なので、一人ひとりの子ど
ものことを先生はよく把握されています。子どもたちとの信頼関
係も築きやすい環境です。この時は先生も生徒も床に座って楽し
そうな授業でした。
2011年11月24日(水)ボーゲンセ国民学校にて
保護者はいつでも授業参観が出来ます。ご自分のお子さんの教室での様子をいつ
でも見ることができます。授業が公開されていますので、不安も少なくなってい
ます。“モンスター化”するまで、我慢したり、黙っていたりすることはなく、
保護者が疑問に思ったことは何でも言ってもらっています。結構、細かな要求な
どもありますが、ご一緒にとことん話し合い、相互に理解するようにしています。
このような中で、教師と保護者の信頼関係は築かれていき、学校と家庭が協力し
て、子どもたちにとっての最適な環境を保てているのではないかと思います。
質問2:日本では「いじめ」で自殺するケースも起きています。デンマークでは、「いじ
め」や「いじめ」が原因による自殺のようなことは起きていないのでしょうか?
回答2:我校でも5年生(10歳以上)の子どもに「いじめ」についてのアンケートを実
施した結果、5%くらいの子が何らかの「いじめ」に絡んでいることが分かりま
した。「いじめ」の内容は携帯電話やフェイスブックなどによる誹謗中傷が主で
す。そのため、学校だけでの対応は難しく、家庭とも連携しながら対応を進めて
いかなければなりません。
携帯やフェイスブックなど学校でも授業中以外は使用できます。「いじめ」が生
じるからといってこれらを禁止したりはしません。「いじめ」が発生した場合は
担任の教師の他に「いじめ対応」についての特別な研修を受けた教師が、該当の
子どもたちに個別な対応を行い、「いじめ」が深刻化しないようにしています。
★教室の様子:子どもたちへのITの授業の様子
2010年11月24日(水)ボーゲンセ国民学校にて
ちなみにフェイスブックの利用などは、その肯定的な側面を大切にしています。
何か間違ってはいけないので禁止ということにしていては、折角の利器を活用出
来ません。学校でのインターネットの利用については、基本的に子どもたちの自
由にしていますが、何を閲覧しているかはチェックしていて、悪影響のあるサイ
トへのアクセスについては指導や話し合うようにしています。
このようなことも、学校理事会で保護者や地域の代表の人たちとも話し合い一緒
に考えてもらっています。要は保護者の皆さんも巻き込んで、子どもたちのこと
について共に考えることが大切だと思っています。
★休み時間の校庭の様子:元気よく走りまわって、子どもらしさがいっぱいです。
2010年11月18日(木)ブランナロップ国民学校にて
質問3:どうしても教師の言うことをきかない子どもには「体罰」は許されるのですか?
回答3:「体罰」は絶対に許されません。もし、教師が体罰を振るうようなことがあれば
理由は何にせよ、即刻解雇されます。幸いにして、そのようなことはまだ一度も
あったことはありません。
「体罰」は暴力に他なりません。暴力は法律で禁止されています。保護者でさえ
も家庭で躾の名のもとに「体罰」をすることは禁止されています。言うことをき
けなくなっている子どもには時間をかけて説明し理解させます。暴力でもって、
言うことをきかせることしか出来ない教師や保護者は、その資格はありません。
課題を抱えた子どもの対応は難しく、そのことで教師もストレスを抱えます。そ
のために教師同士で話し合い、互いに援助し合う関係を大切にしています。職員
室がゆったりしたティーラウンジのような雰囲気なのは、教師同士がそのような
関係を持ちやすいようするためです。教師の孤立を防ぐためでもあるのです。
★ティーラウンジのような素敵な職員室:これが職員室です!?
2010年11月24日(水)ボーゲンセ国民学校にて
デンマークのどの学校の校長先生も口を揃えて言われるのは、「学校は子どもにとって楽
しい場所でなければならない。楽しさから子どもに学ぼうという意欲が湧いてくる。」というこ
とです。楽しいというのは、今まで自分の知らなかったことを知り、出来なかったことが出来
るようになるという、これまでになかった新しい世界が拡がるという“楽しみ”のことです。
★楽しさいっぱいの図書室:わくわくしそうな雰囲気ですね。
2010年11月18日(木)ブランナロップ国民学校にて
デンマークの学校が、家庭や地域を巻き込みながら、このことを目指して取り組んでいる
ことは素晴らしいことです。その結果、子どもたちが子どもらしく育ち、その子どもたち
が大人になり国を支えることで、幸福度世界一の国が出来ているのではないでしょうか。
今年のデンマーク研修ツアー11月10日(日)〜17日(日)では、どんな新しい発見
に出会うかとても楽しみです。
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【お知らせ】銭本隆行さんの講演が決定しました!
毎回、デンマーク研修ツアーで現地での案内をして頂いている銭本氏(日欧文化
交流学院学院長)の講演会が3月30日(土)13:30から福岡市立婦人会館
で開催されます。この時期にデンマークから一時帰国された銭本氏をお招きして、
福岡で講演会を開催します。今回のテーマは“いじめ”への対応などを含めた「
デンマークの教育について」です。是非、ご参加下さい。※受講料1000円
★お申込みはメールで nakayoshi@kyoikubunka.com へ
「3月30日講演参加申し込み」と「お名前」を書いてお申込み下さい。
★詳しくは教育文化研究所のHP「なかよし情報」のページを参照下さい。
http://www.kyoikubunka.com/nakayoshi.html
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【11月14日(水)フナロック国民学校(オーデンセ市)視察レポート】
世界的な童話作家アンデルセンの生誕地のオーデンセ市にあるフナロック国民学校
を訪問しました。在校生は760名(6歳から16歳)。教師は50人配属されています。
1クラスの生徒数は平均20名程度です。デンマークでは1クラスの定員が28名と決め
られていて、それを超すともう一クラス設けなければなりません。しかし,全国平均でも1
クラスの在籍数は23名〜24名程度となっていて、子ども一人ひとりに教師の配慮が行
き届く体制になっています。日本では来年度から1クラス35名以下を目指すという計画
が立てられていますが、現在は40名近いクラスもあり、現場の先生からも細やかな指導
や配慮が難しいという声が出されていて早期の実施が望まれますね。
★フナロック国民学校(オーデンセ市) 2012年11月14日(水)10:30頃撮影
1948年に創設されましたが、校舎が手狭になったので軍の兵舎(騎兵隊)用に
使用していた古い建物を改装して、素敵な学校に変身させました。
★学校の玄関にはすべての職員の顔写真(※笑顔が多い)と名前の載ったボードが掲げ
られていました。
学校に到着すると、バウン校長が出迎えてくれました。デンマークの教師は校長はじめ
ほとんどの教師がジーパンにセーター姿など堅苦しくない服装で勤務しています。子ど
もたちも、自分たちが呼ばれるように、教師を親しみを込めてファーストネームで呼び
ます。そんな自由な雰囲気が学校全体に漂っていました。
★学校の説明をする校長のバウン氏(右)※ジーパンにワークシャツというスタイル
・校長をはじめ教師は学校単位で採用されます。採用は学校理事会という自主運営
の中で決定される。その学校に雇われれば、退職まで同じ学校に勤務します。
★左の方はデンマークの国民高等学校学院長で今回のツアーのは案内兼通訳をして頂
いたの銭本隆行氏(デンマーク在住)今年3月には福岡で講演会が開催されます。
詳しくは、今回のブログの最後の【お知らせ】をご覧ください。
学校理事会というデンマークの教育現場の特徴ある仕組みについてバウン校長に説明して
もらいました。フロナック国民学校の学校理事会は2名の保護者、2名の職員とそして何
と!2名の生徒代表で構成されます。校長は参与という形での参加で、議決権はありませ
ん。理事会で検討・決定するのは学校の運営に関する全てです。主には方針や予算です。
カリキュラムにつては細かいことは教師の裁量権に任されています。
★学校の図書室 子どもたちがくつろぎやすい空間になっています。
★子どもたちのアイデアもいっぱい!校長先生が抱えているのは、南北アメリカ大陸
を模った図書室の椅子で、高学年の生徒が考えて製作したそうです。
義務教育を終える15歳になると子どもたちは色々な進路に分かれます。デンマークの高
校進学率は50%程度です。残りの50%の子どもたちは10年生という国民学校でもう
一年過ごし自分のこれからを考えるコース、職業専門学校に進むコース、残留も進学も就
職しないコースがあります。最後のコースの子どもたちは、外国からの移民の子、勉強に
興味の無い子などが多く、この人たちの進路相談については、進路指導専門教員が卒業後
も25歳まで継続して、相談を行います。デンマークの若者は、それを受ける権利を保障
されていて、失敗しても、選択を誤っても、いつでもやり直せる仕組みが確立しています。
★1年生のクラスの様子 低学年のクラスは教師とペタゴーと呼ばれている保育士とで
担当しています。このクラスでは女性の教師と男性のペタゴーとが協力して授業を進
めていました。デンマーク授業はどの授業もとても興味深く、子どもたちは楽しそう
です。しかも、テストが無いのですから楽しさは日本とは比べようがありません。
今回のツアーに参加した方からバウン校長に「モンスターペアレント」や「教師の体罰」
など、色々な質問が出されました。さて、校長の返答はどうだったでしょうか。面白い
お話を聴くことが出来ました。それは次回にご紹介しましょう。お楽しみに!
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【お知らせ】銭本隆行さんの講演が決定しました!
毎回、デンマーク研修ツアーで現地での案内をして頂いている銭本氏(日欧文化
交流学院学院長)の講演会が3月30日(土)13:30から福岡市立婦人会館
で開催されます。この時期にデンマークから一時帰国された銭本氏をお招きして、
福岡で講演会を開催します。今回のテーマは“いじめ”への対応などを含めた「
デンマークの教育について」です。詳しくは教育文化研究所のHP「なかよし情報」
のページを参照下さい。http://www.kyoikubunka.com/
800回目の登山
成人の日の今日、全国的にあいにくの天気になりました。福岡でも雨が降ったり止んだり
の状態でした。天気が回復したら天拝山に登ろうと、山登りのスタイルに着替えて準備し
ていましたら、天気予報通り午後から青空が広がりました。早速、自転車に乗って天拝山
へ出発。
今日は登頂800回目の記念すべき登山です。最初に登ったのは2007年の5月15日
です。あれから5年と8ケ月で800回目を迎えました。筑紫野市に引っ越して、散歩が
てら天拝公園に行ったのがきっかけで登り始めました。あれから6年。本当に時間の経つ
のは早いものです。
★我家から眺める天拝山(正面の山) 2012年7月17日7:40撮影
「同じ山に登ってよく飽きないね」とか「何が楽しいの?」と尋ねられますが、「楽しい」
というよりは「気持ちがいい」からだと答えるでしょう。自然の中で、鳥の声を聴きなが
ら、野草を見ながら、木々の香りを感じながら、そして汗をかきながら、一歩一歩と山頂
目指して登っていくだけのことなのですが、一日として同じ日が無く、毎回新鮮なものを
感じさせてくれるのです。
今日はこんな素敵な青い実に出会いました。ジャノヒゲ(蛇の鬚)と呼ばれている細長い
葉の野草の実です。天拝山の麓の武蔵寺境内にはジャノヒゲが所々に生えていて、冬にな
るとその実がそこここに顔を出します。青く艶々としていて、小さな玉石のようです。
★ジャノヒゲの実 2013年1月14日15:00撮影
こんな出会いが年中あります。単に花や草、鳥などに出会うだけでなく、それらを通して
季節と出会うのです。それが、懐かしい思い出にも繋がっていきます。時間の流れの中に
身を任せて、出会うものに心を委ねて、ゆっくりと時を過ごすことの心地よさです。天拝
山は豊な時間と空間をいつも与えてくれます。本当に良い場所と出会うことが出来て、嬉
しく思っています。健康で体力が続く限り、これからも登り続けていきたいと思います。
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【春の便り】先週の土曜日、大牟田の三池山に友人と登りました。とても良い天気で気温
も上昇して、春のような陽ざしでした。明るい光の中で、オオイヌノフグリ
の青い小さな花が綻んでいました。冬の寒さはまだこれからというときに、
その寒さの向こうにある春の足音が聞えてきそうでした。
★オオイヌノフグリ 2013年1月12日14:00撮影
デンマーク2012研修レポート(その4)
毎年デンマーク研修ツアーを企画して希望者の方々と一緒に、デンマークを訪問していま
す。デンマークの文化や教育、福祉、暮らしなどを8日間にわたって視察し、日本に帰国し
てからの自らの暮らしや仕事へ、デンマークの高い幸福度を具現化する知恵を活用して
います。昨年の11月のツアーの様子を連続して紹介しています。今回はそのパート4で
す。お楽しみ下さい。
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【11月12日(月)首都コペンハーゲンの市内見学(その4)】
ランドタワーは高さ35mの円塔です。1642年に国王の命によって天文観測所として
建設されました。このタワーは17世紀の学者たちに利用されていた三つの設備を繋げる
役割も果たしていました。天文観測所と併設された学生対象の教会と大学図書館です。
★コペンハーゲンの中心街に立つランドタワー
2011年11月15日(月)15:40頃撮影
入口で入場料を払うと、階段ではなく螺旋通路をのぼって展望台に向います。7周半する
とタワーの上部に到達するようになっています。1716年にここを訪れたロシアのエカ
テリーナ王妃が夫のピョートル大帝を馬上に乗せて、この螺旋通路を駆け上ったそうです。
なんとも勇敢な(?)女性だったのですね。
ここの螺旋通路を見上げるたびに、そのお連れの者たちがあっけに取られている中をお酒
の勢いに任せて、王女様(お酒好きだったとか?)がご主人の大帝を馬に乗せて駆け上っ
ていく様子が目に浮かびます。今から300年前の出来事です。
★ランドタワーの屋上へと続く螺旋通路
2011年11月15日(月)16:00頃撮影
屋上からは360度のパノラマです。コペンハーゲンの中心部にあるので、この日歩いて
きたアマリエンボー城やフレデリクス教会、ローゼンボー城などが間近に見えます。少し
目を遠くにやると、様々な教会の尖塔が立ち並んでいるのが眺められます。その中で最も
高いのがコペンハーゲンの市庁舎の塔です。高さが110mあります。
市庁舎の塔にも曜日限定ですが上ることができます。以前、私も登ったことがありますが
エレベーターはなく階段を上っていきますが、塔の中は細いて急な階段なので健脚向きで
す。ハイヒールやスカート姿は遠慮した方が良さそうです。
★ランドタワーからの眺め:教会の尖塔が、その権威を示すように立ち並んでいます。
2011年11月14日(月)16:10頃撮影
さらに目を東に向けると、オアスン海峡を挟んでスウエーデンが見えます。海峡を跨ぐ橋
が2000年に開通して、両国の間を車や鉄道が行き来できるようになりました。その大
きな橋も見ることができます。360度の眺望は時間の経つのを忘れるくらいです。
隣接するトリニタチス教会の屋根裏部屋も見ることができます。昔使っていた道具などが
そのまま残されています。また、昔の大学図書館のスペースはいまはイベントスペースに
なっていて、様々な催しが行われています。イベントがない時は、ひっそりとしていて訪
れる人もまばらです。
★昔の大学図書館は今は催し会場として市民に開放されています。
2010年11月10日(月)17:00頃撮影
そこには小さなお店があり、絵ハガキや画集や置物などを販売しています。私はその落ち着
いた感じが好きなので、時々ここを訪れては、デンマークビールを飲みながら、購入した絵ハ
ガキを日本の友人や知人に宛てて書いています。昨年の私の年賀状には、その時の写真を
掲載しました。ちょっとしたテーブルにも素敵な照明が当たり、テーブルには所々に花が飾っ
てあり、とてもいい雰囲気です。ペンも自然となめらかに運びます。
★絵ハガキを書いている様子をレストスペースの店員さん(大学生アルバイト)に
撮ってもらいましたが手ぶれしていました。でも、これくらいボケでいる方がいい
のかもしれません(笑) 2011年11月16日(月)17:00頃撮影
ランドタワーから降りてくると、もう街は夕暮れ時です。お店のショーウインドーが一際明るく感
じられます。クリスマスも近くなり、飾り付けもクリスマスムード一色です。この商店街はストロ
イエと呼ばれていて、コペンハーゲンの人たちはもとより、世界中から訪れる観光客が買い物
や食事などに集まってきます。
約2kmにわたって続くストロイエは、世界最初の歩行者天国と言われていて、365日気持良
く安心して歩ける場所です。ストリートミュージシャンたちが行き交う人たちに、それぞれの歌
や演奏を披露しています。そんな雑踏の上には、北欧独特の蒼いという字が相応しい夕空が
拡がっています。
★黄昏時のストロイエの様子)
2012年11月15日(月)18:30頃撮影
デンマークを初めて訪れる人が一様に驚くのが、夜の明かりの少ないことです。ストロイエは
デンマークで最も賑やかな場所ですが、その場所でも写真のようにケバケバしいネオンサイン
や明るすぎる街灯や看板などはありません。それは、デンマークが「低エネルギー社会」づくり
を目指しているからです。
「右肩上がりの経済成長でなければ幸せになれない」=「だからエネルギーも右肩上がりで必
要だ」という考え方を、そうではなく、これ以上のエネルギー、特に温暖化ガスの排出や放射能
の危険性を増やさないという考え方を1985年に国会決議で明確に打ち出しました。それ以来、
デンマークは再生可能エネルギーの開発や、無駄な電力消費=エネルギー浪費をしない工夫
を国を挙げて取り組んでいます。
ですから日本から比べると薄暗い感じすらしますが、デンマークの人たちはこれで生活出来る
こと、これでも幸福度の高い暮らしを実現することを証明してくれています。幸せとはどういうも
のなのかがはっきり見えているからなのでしょうね。
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次回は三日目に視察したデンマークの国民学校(小中一貫の義務教育を行っている公立学校)
の様子などを中心に、デンマークの幸福社会を担う子どもたちがどのように育てられているかを
ご紹介したいと思います。お楽しみに!
冬いちご in 元旦の天拝山
元旦の朝、カーテンを開けると、家々の屋根の上や駐車場に停めてある車、街路樹などが
うっすらと雪に覆われていました。いつも登っている天拝山も雪化粧。さっそく着替えて
自転車で天拝山に向いました。
★我家から元旦の雪景色 1月1日7:30頃撮影
天拝山には昨年は年間で140回ほど登りました。仕事や活動が忙しくなった一年だった
のですが、その合間をみては登っていました。低い山なのですが、適当に負荷がかかって
いい運動になるからです。運動不足解消と自然を五感で楽しむことなど、1時間半ほどの
この時間が私にもたらすものはとても多いです。
登りの急な坂では一所懸命に登っているのですが、その時に結構いいアイデアが思い浮か
んだりします。今まで、どうしたものかと考えあぐねていたものが、まったく違う角度か
らの考えが湧いてきて、一気に解決したりすることもあります。不思議ですね。机に座っ
てあれだけ考えていた時には思いもしないのに・・・。
★天拝山頂上から筑紫野市及び宝満山、四王寺山などを望む 1月1日 9時頃撮影
山頂は天拝神社にお参りする人たちに雪が踏み固められてツルツル状態。設置してある温
度計を見ると氷点下1度でした。お参りを済ませて、頂上から筑紫野市から博多にかけて
の雪化粧をした町や、その向こうに屏風のように聳えている宝満山、四王寺山の雪景色な
を堪能しました。雪の降った日ならではの景色です。寒さをこらえて登った甲斐がありま
した。
★天拝山頂上の温度計は氷点下1度! 1月1日 9時頃撮影
この日の下山コースは石楠花谷コースをたどることにしました。このコースは数年前の大
雨の際の土石流災害で長い間通行止めになっていました。昨年、砂防ダムなどの工事も終
わって通行止めが解除になり、再びこの谷間のこの道があるけるようになりました。と思
うのも束の間、昨年の大雨で大木が倒れて、再び通行止めになってしまいました。
しかし、倒木も片づけられていて、今は危険な個所は無くなりましたが、用心するに越し
たことはないという判断から、交通止めは続いています。このコースに以前から、冬いち
ごが実る場所があります。冬場になると、その実を食べに訪れますが、雪の降る日には、
その紅い実と白い雪とのコントラストが楽しめるので写真を撮りにいきます。
★雪をかぶった冬いちご 1月1日 10時頃撮影
案の上、冬いちごたちが白い雪の中から顔をのぞかせていました。白く冷たい雪は彼らの
引き立て役のようです。小さな実なので、普段はあまり目立たないのですが、雪のおかげ
で一躍主役に抜擢されたかのようです。
雪の積もった谷間は静まり返っています。時折、木々の間から鳥の鳴き声が聞こえてきま
す。ホオジロ、シロハラ、メジロ、ヒヨドリなど、こんな雪の中でも餌を求めて、元気に
飛び交っています。私も鳥たちに負けないで、この冬を乗り切ろうと思います。“冬来た
りなば春遠からじ”です。梅の枝の蕾が少し大きくなったような・・・。早く春が来ない
かなあ。
★雪の石楠花谷 1月1日 10時頃撮影
デンマーク2012研修レポート(その3)
11月に訪問し、デンマークの文化や教育、福祉、暮らしなどを8日間にわたって視察して
きましたが、その時の様子を何回かにわたって紹介しています。今回はそのパート3です。
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【11月12日(月)首都コペンハーゲンの市内見学(その3)】
ローゼンボー公園を抜けると、もうコペンハーゲンの中心街です。自転車利用を促進するた
めに至る所に駐輪場があります。そこには子どもたちを乗せるバギーの付いた自転車をよく
見かけます。雨や寒さから子どもを守るために、幌付きのバギーがほとんどです。若い親た
ちは、出勤前に幼い子どもたちをこのバギーに乗せて保育園に連れていってから、職場に向
います。このバギーにも可愛いい子どもたちが乗るのでしょうね。
★中心街の駐輪場に駐車してあるバギー付の自転車
2012年11月12日(月)13:20頃撮影
デンマークで自転車利用が進んでいることの背景には、国民的理解があるからです。デンマ
ークも日本と同じくオイルショックの襲われましたが、その際に石油をはじめ、エネルギー
についての国民的議論が行われました。際限の無い右肩上がりのエネルギー消費が国民生活
に及ぼす影響について、真剣な話し合いが行われ、自転車利用の促進による石油消費の削減、
原子力発電に頼らない再生可能エネルギーを利用した省エネルギー化社会を目指すデンマー
クの姿勢が決定されました。今から30年前のことです。
そのころに生まれた子どもたちは既に三十歳。自転車通勤をすること、原発の無い社会など
を当たり前のこととして暮らしています。自転車社会は?交通渋滞や交通事故の減少?排気
ガスや騒音、振動などの公害の防止などにも貢献していて、デンマーク都心部の空気はとて
もきれいです。
★カラフルなバギー、ブランド物のバギーなどお洒落なものも多く見かけます
2012年11月12日(月)13:20頃撮影
お腹も空きましたが足も疲れました。そこで、休憩も兼ねて、トリニタチス教会に立ち寄り
ました。この教会は17世紀の中ごろ大学生用の協会として建てらました。今の建物は18
世紀に焼失し再建されたものです。今は一般向けの教会として多くの信者の信仰の場となっ
ています。
この日はパイプオルガンの演奏の練習が行われていて、その迫力のある調べが聖堂いっぱい
に響いていました。クリスマスが近づき、この時期の教会では合唱や演奏などの練習が行わ
れています。この教会のパイプオルガンの演奏を一度は聴いてみたいものだと思っていまし
たので、立ち寄って本当に幸運でした。
★トリニタチス教会聖堂内に設置された大きなパイプオルガン
2012年11月12日(月)13:30頃撮影
さて、休憩も終わり、再びレストランに向けて歩き始めました。コペンハーゲンの銀座にあ
たるストロイエ(世界初の歩行者天国)をブラブラと。昨年は、この通りにタイルを張る工
事が行われていましたが、今回は工事も完了して快適な散歩の楽しめるストリートに変身し
ていました。
★ストロイエ近くの通りにて 2012年11月12日(月)13:40頃撮影
とにかく、あちらのショーウインドー、こちらの教会、そちらの公園などと寄り道ばかりし
たために、ランチは午後2時近くになってしまいました。この時期のデンマークでの午後2
時は、日本で夕方の雰囲気です。日本と違うのは、夕方が長いということかもしれません。
西に傾いた陽がゆっくりと落ちていくという感じです。
屋上が大きなガラス張りの空間になっているレストランで昼食することにしました。デンマ
ーク名物のサンドイッチを注文したり、デンマークのビールを飲んだりしながら、ゆったり
とランチを楽しみました。
★天井がガラス張りで開放的な感じがなによりなお店なので、私のお気に入りです。
2012年11月12日(月)13:50頃撮影
毎回、このレストランにお連れしますが、デンマーク滞在2日目なので、皆さんがいつも驚
かれるのが食事のボリュームです。デンマーク人は体格の良い大柄な人が多いので、食事の
ボリュームも日本人と比べるとかなり多めです。注文したメニューがテーブルに運ばれると、
その量の多さ、大きさにびっくりします。
体が大きいから食事の量が多いのか?食事の量が多いので体が大きくなるのか?いずれにし
ても、思わずサンドイッチの「小」下さいと言いたくなるような大きさです。“郷に入れば
郷に従え”です。デンマークに滞在している間は、この量に慣れるしかありません。
さて、遅めの昼食を終えて、先ほどのトリニタチス教会に併設されているランドタワーを訪
れてみることにしました。17世紀半ばにつくられた天文観測所です。今は多くの観光客が
訪れています。コペンハーゲンの街は高さ制限などが行われ、街並みの保存などが進んでい
ます。そのため、このランドタワーより高い建物が近くにないので、高さ36mの屋上から
は360度の眺めが楽しめます。
★世界最古の天文観測所ランドタワー
2012年11月12日(月) 15:00頃撮影
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ランドタワーからの眺めについては、次回をお楽しみに!それにしても、まだデンマーク
研修ツアーの一日目の半分までのレポートです。八日目の最終日まで、このレポートは第
何号まで続くのでしょうか?
途中にデンマーク研修ツアー以外のことを挟みながら、根気強く書き続けることにしま
しょう。ひょっとして一冊の本にできるかも?それもお楽しみに!
デンマーク2012研修レポート(その2)
11月に訪問し、デンマークの文化や教育、福祉、暮らしなどを8日間にわたって視察して
きましたが、その時の様子を何回かにわたって紹介しています。今回はそのパート2です。
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前回はコペンハーゲンの街中を行進する宮廷衛兵が交代式のあるアマリエンボー城に向
けてバスやトラックを引き連れてながら、私たちに近付いてきたところまででしたが、今回
はその続きをご紹介しまししょう。
【11月12日(月)首都コペンハーゲンの市内見学(その2)】
正午にアマリエンボー城で衛兵交代が毎日行われています。これは観光のためではなく王
女様の住居(アマリエンボー城)、日本でいると皇居の警備のためのものです。日本の皇居
のような物々しさはありません。国民に開放された場所となっていて、中央広場には自由に
立ち入ることが出来ます。
★アマリエンボー城内を行進する交代式に向かう衛兵とそれを待っている観光客
2012年11月12日(月)12:00頃撮影
衛兵は雨にも風にも負けず、24時間勤務(※2時間置きに交代)で王宮の警護に当たって
います。カメラを向けても笑顔になったり、ましてやポーズをとったりしてくれません。逆に
、挙動不審に思われると、睨みつけられる場合もあるようです。それくらい真面目でないと
衛兵という任務はは務まりませんね。
デンマークには徴兵制があります。18歳になると召集状が全員に届きます。身体検査を
受けて適格者と認定された人の中からくじ引きで徴兵者が決まります。当選確率は10%
くらいです。兵役期間は4ケ月です。くじに当たっても、兵役を拒否出来ます。その場合は、
社会施設などでの活動に従事しなければなりません。兵役の期間は法律で金銭及び身
分、兵役後の職場や学校への復帰も保障されています。
★この衛兵さんは、私がカメラを構えても少し私の方を向いただけで直立不動のままでした。
2012年11月12日(月)12:15頃撮影
衛兵の交替式をじっと立って見ていると足元から寒さが這いのぼってくるようでした。式を
見た後は、少し休憩と暖をとるつもりで、すぐ近くのフレデリクス教会に立ち寄りました。
この協会は別名「マーブルチャーチ」と呼ばれていて、大理石で造られています。イタリア
の大理石ではなく、ノルウエー産の大理石なので少し緑がかっているのが特徴です。
1700年代に建築が始まったのですが、今の姿になったのは150年後の1894年です。
30mの大きなドームを見上げると、その大きな空間を実感します。私は毎年のようにこ
の教会を訪れています。この静寂の中に身を置くと心がふっと安らぎます。少し疲れを
癒すのにもこの教会は私にとって大切な場所です。
★フレデリクス教会 150年かかってノルウエー産の大理石でつくられました
※アマリエンボー城の広場中央の銅像はこの教会を立てたフレデリクス5世の像です。
2012年11月12日(月)12:30頃撮影
教会の祭壇で十字を切って、私たちの研修ツアーに神の御加護を祈りました。私はキリスト
教徒ではありませんが、ミッション系の幼稚園と大学に通っていましたので、一応の心得は
あります。教会を後にして、今度は交替式を終えた衛兵たちが戻っていくお城「ローゼンボ
ー城」に向かいました。
元はローゼンボー城の庭であったローゼンボー公園を通って、お城のそばまで行くと、お堀
のカモやカモメたちが餌を求めてやってきます。多くの市民の憩いの場になっています。親
切な中年の男性が話しかけてきて、簡単にこのお城のことを説明して下さいました。この城
は1600年代初めに建てられ、今も王室として使用されていて、一部は博物館として公開
されています。
★ローゼンボー城 その名の通りローズの色をした上品な感じのするお城です。
2012年11月12日(月)13:00頃撮影
ローゼンボー公園では木々の黄葉がとてもきれいでした。芝生の上に、大きな葉が散ってい
ます。何の木の葉なのでしょうか。風が吹く度に、枝から離れて、ゆっくりと舞い落ちきま
す。デンマークの晩秋の風情をたっぷり味わいました。
★ローゼンボー公園 2012年11月12日(月)13:15分頃撮影
そろそろお腹が空いてきたので、どこかでランチタイムです。公園を抜けると、すぐそばは
コペンハーゲンの中心街です。どこかのレストランで昼食をとることにしました。さて何を
食べることにしましょうか?・・というところで今日はおしまいです。続きをお楽しみに!
ハワイの旅日記を先日ようやく書き終えました。その時の出来事を写真を見ながら、
一つひとつ思い出しながら、書き進めていきました。折しも、末娘が父の日のプレ
ゼントにと、ハワイのウクレレ奏者のCDを贈ってくれました。そのCDを聴きながら
書いていると、いつしか意識は再びハワイへと戻り、本当に楽しい時間でした。
今日は「ハワイ随想(その2)」ということで、「フライデー・コンサート」について書いて
みることにします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6月1日(金)はホノルルの街をゆっくり歩いて楽しみました。朝食後、宿泊先のホテ
ルのそばのバス停から、イオラニパレスに向けて出発。2ドル50セントのバス料金を
前払いしてから乗車。観光バスでないので、色々な人が乗ったり降りたりします。
そんな様子からも、ハワイの人たちの暮らしぶりが伝わってきます。
★イオラニ・パレスや州政府ビルのある広々とした公園と現代的なビル群
ハワイ州の州政府ビルの前のバス停で下車。広々とした公園には花々が咲き乱れ、
木立を抜けて吹いてくる風には海の気配を感じます。公園の向こうには近代的な高
層ビルが林立して、そのコントラストも素敵でした。
州政府ビルの隣に1882年に建立されたハワイ王朝の宮殿「イオラニ・パレス」
があります。アメリカ合衆国では唯一の宮殿です.広い庭には大きな木々が生えて
いて、ねむの木やジュリアンなどが大きな木陰をつくってくれています。この宮殿
の庭で毎週金曜日正午過ぎから「フライデーコンサート」という無料のコンサート
が催されているのです。
★イオラニ・パレス アメリカ合衆国唯一の宮殿 6月1日午前10:30撮影
正午まで、この公園の近くにあるハワイ州立美術館で、ハワイが生んだ現代アート
の数々を鑑賞しました。スペイン様式の歴史遺産にもなっている建物が素晴らしい
美術館に生まれ変わっていて、たくさんの作品が展示されていました。ここだけで
も半日は楽しめる場所です。
さて、コンサート開演の時刻近くになりましたので、美術館を出て、再びイオラニ
宮殿のお庭に戻ると、大きな木の下で白いお揃いの服を着た「ロイヤル・ハワイア
ン・バンド」の楽団員の皆さんがコンサートの準備をしていました。私たち観客も
自分の座席は、用意してある折りたたみ椅子を好きな場所に持っていってセットし
ます。私は楽団の正面の特等席に椅子を据えて開演を待ちました。
開演前にボランティアの方がこの日のプログラムを観客に配って歩かれました。そ
れを読むと、1836年にこのバンドがカメハメハ大王によって創設されたと書かれ
ていて、とても由緒ある楽団だということを知りました。
★大きな木が作る木陰がコンサート会場でした。6月1日12:00過ぎ撮影
30人近い楽団員にボーカルの男性3名プラス女性1名、さらにはフラダンサー1名
でのコンサートが始まりました。最初の曲はハワイの州歌を「ハワイ・ポノイ」を全
員で起立して 合唱しました。
「アロハ・オエ」や「ハワイアン・ホスピタリティ」「サンゴ礁の彼方」など、お馴染み
の名曲ばかり全13曲。1時間の演奏を満喫しました。フラダンサーの女性の踊りの
優雅だったことこの上無し!でした。まるで風にそよぐ椰子の葉のように、自然で優
しいその踊りにすっかり魅了されてしまいました。このような格式の高い楽団に合わ
せてソロで踊るのですから、有名なダンサーの方なのでしょうね。
★プロのフラダンサーの踊りを間近に見て魅了されてしまいました。Beautiful!
木陰を通り過ぎる風が肌を撫でて心地よく、それがまたハワイアンミュージックとマ
ッチして、ハワイ風情満点の野外コンサートでした。観光客にはあまり知られていな
いのか、あるいは時間的に市内観光ツアーには入れにくいのか、ほとんどの聴衆は地
元の人たちでした。そのお仲間にに入れてもらって、フレンドリーな時間を過ごさせ
て頂きました。
楽団員の中に日系人も多く、日本にも何度も来演されています。バンドマスターのク
ラーク・ブライト氏と挨拶を交わした時に、来日の回数は20回にも上るという話で
した。ハワイと日本との関係の親密さを物語っています。フライデーコンサートは、
コンサートというだけでなく、ハワイの文化やその気風を伝える大切な場でもあるよ
うに感じました。
素敵な演奏や踊りをロイヤル・ハワイアン・バンドの皆さんに感謝します。そして、
このバンドを創って下さったカメハメハ大王にも感謝を捧げます。皆さんも、ハワイ
に行かれて、もし金曜日の正午頃に時間があれば、参加されてはどうでしょうか。
★この大きな木のしたでコンサートがありました。※演奏後片付けも終りました。
川端康成著「伊豆の踊り子」を読んだのは、高校生の頃だったように記憶しています。あの
頃は、ろくに勉強もせず、文学作品を読みふけるか、ビートルズの曲を聴くか、そんな毎日
でした。その頃この作品を読みました。同じ時期に映画化もされました。吉永小百合さんが
踊り子役を、学生役を高橋英樹さんが演じていました。私が俗にいう“サユリスト”になった
のは、この映画からかも知れません。もう45年も前のことです。
のんびりした九州から学生運動の激しかった京都へと進学して、川端康成の世界とは縁遠
い著作ばかりを読むようになりました。それ以来、川端作品を読んではいないのですが、私
の青春時代の思い出の中には、この作品が残っています。
そんな私に毎年春になると「伊豆の踊り子」を思い出させてくれる花があります。その花を今
日はご紹介しましょう。まずは、花をご覧ください。
★オドリコソウ(踊子草) 4月14日15:00頃撮影 筑紫野市塔ノ原にて
「オドリコソウ」という花です。今、ちょうど見ごろです。私がいつも登っている天拝山に向かう
途中に、この花の群生している場所があります。場所は4mくらいの斜面です。背の低いこ
の花を青空をバックにして撮影できる絶好のポイントなのです。毎年、ここでの撮影を楽しみ
にしています。
花の名前の「オドリコソウ(踊子草)」。花の様子が、ピンクの花笠をかぶった踊り子たちが輪
になって踊っているように見えるところから由来しています。確かに、そのような気持ちで眺め
ると、踊っています。今、その斜面いっぱいにピンクの花笠の踊り子たちが舞っています。
その様子を見ながら、昔本で読み、映画館で観た「伊豆の踊り子」が脳裏に蘇ってきます。
もうストーリーもぼんやりとしか覚えていないのですが、あの作品を感じていた若い時の私
の空気のようなものを、この花を見るたびに感じるのです。
人の記憶は面白いものですね。このようなかたちで私の中には、何の関係も無いもの同士が
つながっています。私の中では意味のある関係なのですが、それは私にしか分らない世界で
のつながりなのです。
この「踊り子」の名の付いた花がもう一つあります。それはヒメオドリコソウ(姫踊子)という花
です。ヨーロッパ原産の花で日本に帰化した植物です。その花の様子はご覧のとおりです。
★ヒメドリコソウ(姫踊子草) 4月12日 筑紫野市武蔵にて撮影
オドリコソウと比べると小さな花でが、群生度はこちらの花の方が密です。花の様子は随分
違うように思うのですが、どちらもシソ科の植物で葉が似ているのと、花の色も薄いピンクで、
更には立ち姿がまっすぐに上に伸びるという点でも似ています。花がオドリコソウよりも小さい
ので、“姫”とついているそうです。
この花の方が少し早く咲くので、この花を見ると、「オドリコソウもそろそろかなあ」と思います。
そしてオドリコソウが咲くと、「伊豆の踊り子」を思い出します。
ピンクのかわいい花群に近付くと、笛や太鼓、三味線の音などが聞こえてきそうです。花笠を
かぶった踊り子たちが輪になって踊っているようです。今がオドリコソウの見ごろです。
3月に入って今日で6日。なかなかスッキリとしたお天気に恵まれません。青空が拡がれば
野山にハイキングという気持ちなのですが、・・・。
3月3日に久しぶりに晴れました。さっそくカメラを肩に散歩に出かけました。気温も急上昇し
て3月下旬並みの陽気ということです。1週間ぶりに歩いてみると、白梅の花が咲き始めてい
ました。早咲きの紅梅は散り初めていて、その樹の下はピンクの絨毯を敷いたようでした。
★綻び始めた白梅の花。今にも綻びそうな蕾もたくさん。 3月3日 天拝山山麓にて
梅の花はこの時期の花を代表するものです。私の住んでいる筑紫野はその昔、太宰府に左
遷された菅原道真(註1)の所縁の地が多くあり、その関係で梅の花も多くの人から愛されて
います。梅の花が咲き始めると、公の詠んだ「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なし
とて 春な忘れそ」という有名な和歌を思い浮かべる人も多いことでしょう。
※註1:845年〜903年、平安時代の貴族、学者、漢詩人、政治家。宇多天皇に重用されて、醍醐朝では右大
臣にまで昇進。しかし、左大臣藤原時平に讒訴(ざんそ)され、大宰府へ権帥として左遷され現地で没す。
京都で大学時代を過ごしましたが、春になると梅の名所の北野天満宮に何度も出かけました。
この神社が菅原道真公を祀って1000年前に建立されたことは知っていましたが、歴史的建
造物としてしか意識していませんでした。公の詠んだ和歌も、その悲しさ寂しさなども深く感じ
ることはありませんでした。
ところが今、この年齢になり、また道真公ゆかりの地“筑紫野”に住んで、あの和歌をどのよ
うな気持ちで詠まれたのかを改めて思うと、讒言(註2)されて、不本意なまま九州に左遷され
る公の気持ちが痛いほど伝わってくるような気がします。本当に悔しかっただろうし、悲しかっ
たろうし、苦しかったのではないでしょうか。
註2:讒言(ざんげん):事実を曲げたり、ありもしない事柄を作り上げて、その人のことを目上の人に悪く言うこと
註3:道真公の太宰府左遷の際、4人の子どもたちも流罪にされ、一家離散の目に遭っています。
道真公は太宰府に来られてわずか2年あまりで亡くなっています。私がいつも登っている天
拝山に登り、自らの潔白を天に訴え、その冤罪を晴らそうと祈られたと言われています。昔
は「天拝山」ではなく「天判山」(天に真の判断を願った山)と呼ばれていて、頂上には天拝神
社、山麓には御自作天満宮など道真公を祀る場所が多くあり、それに触れるたびに、公の無
念さ、世の中の無常を感じます。
★天拝山山麓にある道真公を祀る御自作天満宮 2月19日大雪の日に撮影
・・・・・・わずか2週間余り前とは思えないような雪景色ですね。
1000年以上も前のこような悲劇が道真公という人物の身の上を通して伝わってきます。同
時にこのような対立や反目は、1000年後の今も続いています。紛争や戦争はその極端な
ものですが、日本だけでなく世界中で様々な争いが繰り返されています。
私はそれを“人間の性”にしたくありません。「人間とはそういうもの」「人間には闘争本能が
ある」と、決めつけたくはないのです。もういい加減に争いは止めて、仲良く助け合って生き
ていってはどうなのでしょうか。これだけ文明を発達しています。知恵も心も寄りやすくなる
環境は整っています。
私はそういう「なかよしな世界」を目指して、今の自分に出来ることは何かと考えて生きてい
こうと思っています。いつでもどこでも誰とでも仲良く、助け合って生きていくことが出来れば
本当に幸せなことだと思います。
天拝山の麓に武蔵寺という藤の花で有名なお寺がありますが、今月の言葉として写真のよ
うな言葉が本堂の前に掲げてあります。「寒さにふるえた者が、暖かさを知る」と掲げてあり
ます。
★武蔵寺 本堂に毎月掲げられる言葉 3月はこの言葉です。 3月3日撮影
解釈はそれぞれの人に任されるのでしょうが、私には次のように思えました。「苦労をした人は
苦労をしたからこそ、人の温かさをより感じることが出来る。だから、今は苦しくても、そのこと
はきっと幸せになることに繋がっているのだよ。」と。
今の混沌とした世の中を、明日への希望を持って生きていくことで、この言葉が実感できる日
がやってくるのではないでしょうか。もう争うことに知恵や心や物資・経済を使うことを止ましょう。
心を寄せて助け合い、支え合い、仲良く生きていきましょう。
寒い日が続いています。インフルエンザも急に流行り始めました。気をつけて下さい。私はこ
の時期になると、インフルエンザなどに感染しないようにマスクをかけます。講演などは「今日
体調不良なので中止させて下さい」とお断りできないからです。そのため、健康には気を付け
ています。何とか、この数年間は迷惑をかけないで済んでいます。
私にとっての健康維持に貢献してくれているのが、「天拝山(てんぱいざん)」の存在です。仕
事や天候の関係で登れない日以外は出来るだけ登るようにしています。
我家から自転車で15分かけて山麓の武蔵寺まで向かいます。お寺にお参りしてから登り始
めます。登山用スティックを両手に持って登るので、脚力だけでなく、腕力や胸の筋力も鍛え
られます。登りは「菅公の道」というコース。傾斜が急なので呼吸が荒くなりますが、これが肺
活量の維持に良いようです。
★雪の残った山間の道を行く 天拝山・菅公の道にて 2月9日 10:00ごろ撮影
運動だけでなく、山登りは気分転換にもなります。出会う人たちと挨拶を交わしたり、立ち話
をしたりして、交流の場にもなっています。人だけでなく、野鳥や森の木々とも挨拶します。
最近、シジュウカラの声がよく聞こえます。陽の高さが春に近付いているので、そろそろ愛
の歌声の練習なのでしょうか。
雪が降ると、天拝山の表情が随分変わります。いつもと違う表情が新鮮に思えます。雪の降
った日の楽しみの一つに、雪の上に残った足跡があります。小鳥の小さな足跡から人間の大
きな靴の跡まで本当に色々な足跡を見つけます。先日は、天拝山に棲みついている猫の足
跡が雪の上にくっきりと残っているのを見つけました。さあ、この足跡の主はどの猫なのかな?
どこに向かっているかな?などなど、そんなことを考えるのも楽しみです。
★7合目付近の岩の上に残された猫の足跡 2月6日 午前9時頃天拝山にて撮影
天拝山の楽しみには犬たちとの出会いもあります。飼い主に連れられて、多くの犬も登って
きます。私のエッセイ集「なかよし読本」にも掲載した(★註)ことのある“シロちゃん”にも時
々会います。昨日はそのシロちゃんに会いました。久し振りなので、彼女の頭を撫でながら
飼い主の方と立ち話をしました。
その方の話を聞くと、シロちゃんは後ろ脚を痛めていたので、少し休養させていたそうです。
年齢が11歳。犬の年に換算すると66歳。「無理をさせられないから」と優しい目をしながら
下さいました。昨日はすっかり復調したシロちゃんに会えて嬉しかったなあ。
★久しぶりに会ったシロちゃん ケガも回復して登山再開! 2月9日10時15分撮影
健康の維持、気分転換、人や犬、自然との出会いなどなど、天拝山から多くのものを頂いてい
ます。天拝山に感謝です。5年前に登り始めてから、今日で678回目です。もうすぐ700回記
念の登頂を迎えます。この調子でいくと、3月中旬に達成しそうです。その頃には桜の花もほこ
ろび始めていることでしょう。ウグイスの声もそこかしこで聞こえているでしょう。あと1ケ月でそ
んな季節がやってきます。
★註:「なかよし読本」(長阿彌 幹生 著 教育文化研究所 刊) 定価500円(税込)
日常の中で出会ったり、気づいたりした“なかよし”について書き綴ったものです。西日
本新聞に私が1年間執筆したエッセイ「ちょっと心呼吸」の中から抜粋して出版しました。
お読み頂ければこれほど嬉しいことはありません。
※購入希望の方は教育文化研究所の以下のメールに住所・お名前・電話番号・必要数
量をご連絡下さい。こちらからお送りします。書籍代と郵送料100円と振込料120円
が別途必要になります。 → 連絡先:nakayoshi@kyoikubunka.com
私がマイカーを止めて自転車に切り替えたのは4年前のことです。もともと私はマイカーを持
っていませんでした。なぜマイカーを持ったかというと、45歳のときに家族の通院の必要性か
らマイカーを持つことになりました。その後、会社を辞めて自営になった関係で使い続けていま
したが、その必要性が無くなったのを機にマイカーを手放すことにしたのです。近くは徒歩と自
転車、遠くへはバス、電車、時々タクシーなどの公共交通を使っています。
★デンマークの無料レンタル自転車:無料で借りれるシステムが整っています。
2011年11月14日 デンマーク コペンハーゲン市内で撮影
マイカーを手放す理由は、「マイカーが必要不可欠でなくなったから」というのが理由です。確
かにあればあったで便利ですが、それが“不可欠”かというとそうではないのです。現在住んで
いる場所は電車の駅やバス停まで歩いて7分〜8分です。タクシーは5分くらいで駆けつけて
くれます。ショッピングセンターや総合病院、市役所などは自転車で10分くらいの距離にあり
ます。
どうしても車が必要な場合は、友人の車を貸してもらいます。友人は昼間働いているので、そ
の間は駐車場に置きっぱなしなので、その時間を借りることにしています。お礼は我家で食事
をご馳走することにしています。こうすることで、車を借りることで一緒に食事が出来て、友人
と、さらに仲良くなります。これは車を持たないことで発見した効用の一つです。
「マイカーを持たない効用と」いうことで言うなら、まだまだあります。まず第一には、運転とい
う労力を使わなくて済むということです。運転をしているときは、気にもならなかったのですが、
止めてみて、いかに自分が車の運転に労力を費やしていたかに気が付きました。肩こりや腰
痛などが軽減したのです。事故を起こさないようにと注意を集中したりや、長時間同じ姿勢を
しなければいけないということが、知らないうちに体にダメージを与えていたのです。
★デンマークの鉄道には自転車のままで乗れる車両が連結されています。自宅から自転車で駅まで走り
そのまま電車に乗って、目的の駅で自転車を降ろして、そのまま会社や学校へ通っています。日本も
早くそうならないかなあ。 デンマーク コペンハーゲン中央駅にて 2011年11月14日撮影
第二の効用は経済的効用です。普通乗用車を所持していましたので、車検費用や保険料、
税金、駐車場代など月割りに計算すると、私の場合は3万円程度になりました。さらに車を
動かすためのガソリン代や車の洗浄料なども入れると月に5万円くらいはかかっていました。
その後、ガソリン代は30%も上昇しているので、・・・。車のローンが残っている場合は更に
負担が大きくなります。もちろん、公共交通を利用するとその交通費は必要ですが、車を持
つために必要な費用の4割程度で済んでいます。
効用はもっとあります。地球温暖化防止への貢献です。排出CO2が少なくて済むので「地球
にやさしい」暮らしが実現しました。CO2の排出量比較をすると、1人の人間を1km運ぶ場合、
マイカー(普通乗用車)は168g、それに比較するとバスは51g(普通車の1/3)、電車は19
g(普通車の1/9)にしかなりません。
※(「2009年版運輸・交通と環境」<交通エコロジー・モビリティ財団発行>より)
また、マイカーを持たないことは事故や騒音、振動など、危険や汚染を減らすことが出
来ます。これも大きな効用だと思います。更には渋滞も少なくなり、本当に必要な車が
走り易くなり、公的な交通や運輸手段としても効率化が進みます。さらには、渋滞緩和
のためのバイパス道路などを建設する必要がなくなり、税金をコンクリートから人へと回
ことが出来ます。車が減ることはいいことずくめです。
一方で自動車産業などは打撃を蒙るかもしれません。しかし自動車産業は環境産業
とか自然エネルギー産業、住宅産業へとこれからを開拓する産業へと転身を図れば
いいのではないでしょうか。自動車産業などは過当競争で、発展途上国の追い上げも
激しい分野です。この分野は彼らに譲って、自動車産業で培った先進技術を、これから
の未来分野で発揮していければいいでのはないでしょうか。
私はマイカーを否定するものではありません。必要不可欠な人は持つべきだと思い
ます。しかし、不可欠でない人は“持たない生き方”に切り替えてはどうかと提案し
ているのです。“断捨離”を車にも向けてみてはどうかと思うのです。“持たない生き
方”が自分にも周りの人にも、そして自然にもやさしい、楽な生き方が出来るのでは
ないかと。
マイカーを持っていても、乗る回数を減らすのもいいのかも知れません。近くの場所
には徒歩とか自転車で行くようにするだけでも随分違うのではないかと思います。
自転車や歩くことで、今まで車の中では感じられないもの、車のスピードでは見え
なかったものが、いっぱい姿を見せてくれるのではないでしょうか。
もうすぐ、道端には春の野草たちが可憐な花を開き始めますよ。
★私のホームページには自転車利用についてデンマークの先進的取り組みを紹介してい
ます。http://www.kyoikubunka.com/nakayoshi.html
鳥についてのエッセイ「鳥信(ちょうしん)」を毎月書いています。書き始めて、もう12年になりま
す。日常の暮らしの中で、その気になって周囲を見回すと、本当に色々な鳥たちがいることに気
がつきます。その鳥たちのことを感じるままにエッセイにしてきました。今日は、昨年11月にデン
マークに行ったときに書いた「鳥信NO.139」を紹介します。
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鳥信NO.139 オオハクチョウ(大白鳥 Cygnus cygnus)
タイトル:鳥から教わる“自由”な世界
デンマークとスウエーデンとを隔てるわずか幅7kmのエーレスンド海峡がある。昔からバルト
海と北海とを結ぶ重要な海の路だ。15世紀初め、デンマーク国王はこの海峡を通る外国船に
通行税を課税し、それを徴収するために砦を築いた。
★クロンボー城(デンマーク・ヘルシンゴー市) スウエーデンに向かう船上より 2010.11.16撮影
16世紀には要塞機能の強化と、王宮機能を付加するための大改築が実施されて、今のクロ
ンボー城(※2000年に世界遺産)が形作られた。中庭を囲むようにして建てられたルネサンス
様式の王宮は贅を凝らし、国王の権威を内外に示した。当時名声を馳せていたイギリスの劇作
家シェークスピアが、訪れたこともないこの城を、代表作のハムレットの舞台にしていることから
も当時の威光を知ることができる。
★クロンボー城(デンマーク・ヘルシンゴー市)中庭 毎年、夏にこの中庭でで「ハムレット」が上演される
2011.11.15撮影
11月中旬、数人の日本人を連れてこの城を訪れた。今まで大理石を敷き詰めた大広間など
王宮を主として見ていたが、今回は地下の要塞部分を初めて見た。華やかな王宮の地下には、
海岸に設置した砲台に向けて、いくつもの地下道が掘られていた。薄暗い地下通路を、ペンラ
イトを頼りに見て回る。その光に反応して、デンマーク語と英語の2ケ国語で書いた説明文が壁
面に浮き上がる。それによると、この地下では多くの兵士や馬、それに奴隷などが臨戦態勢で
重労働に従事させられていた。クロンボー城の地上と地下、それはまるで天国と地獄だったの
だ。地下道を歩いていると、酷使された人たちの苦しみが、時を超えて迫ってくるようだった。
★クロンボー城の大広間 毎夜のように舞踏会や宴会などが開催されていました。2011.11.15撮影
★クロンボー城の地下通路 多くの兵士や奴隷たちが365日、臨戦態勢で酷使されていたのでしょうね。
2011.11.15撮影
見学を終えて地上に出ると、目の前に静かに青く澄んだ海峡が広がっていた。地下道の重苦
しさから解放されてほっとしたその時、海峡の上をオオハクチョウの群れが、白い大きな翼を広
げて、ゆうゆうと飛び去っていく姿が目に入った。
人間が戦いや搾取などで苦悩していたその時代も、そして今も、オオハクチョウはこの海峡を
自由に行き来し、変わらぬ暮らしを続けている。誰のものでもない世界、隔てのない世界の自由
さを私たちに教えてくれるかのように。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【註】オオハクチョウ:分布はユーラシア大陸北部、アイスランドで繁殖し、冬季になるとイギリス、
フランス、カスピ海や黒海沿岸欧州や、中国東北部、朝鮮半島で越冬。日本では日本海側の本
州以北に飛来。全長140-165cm。翼開張220-240cm。全身を白い羽毛で覆われている。体
重は10kg。重いため助走して飛び立つ。草食性。
★旧要塞「カステレット」(コペンハーゲン市)の堀を泳ぐオオハクチョウの親子連れ 2011.11.14撮影
紅葉が美しい季節が終わりを告げようとしています。2週間前は紅葉真っ盛りの時期で
どこの名所も賑わったのではないでしょうか。そして、今、風も無いのにハラハラと木の葉
が舞い散っています。紅葉の“はかなさ”は命の“はかなさ”と結びついて、「ものの哀れ」
を感じさせます。
★武蔵寺(筑紫野市)山門の見事な紅葉 2011.11.29.9:30am 撮影
この燃えるような紅葉も、わずか1週間で散ってしまいました。本当にはかないものです。春
の桜にも“はかなさ”を覚えますが、紅葉の“はかなさ”は寂しさが募るように思えます。季節
が寒い冬に向かうということもあるのかも知れません。
★紅葉の散ってしまった武蔵寺の山門 2011.12.06.9:00am 撮影
今頃の時期は、まだ散り残った紅葉と、散ってしまった落葉とが、頭上と足元から初冬の
風情を楽しませてくれます。木々にも個性があって、周囲の木はすっかり落葉しているの
に、その木はまだしっかりと紅葉していたりします。早めに散った落ち葉の紅と散り残った
紅葉とが、あたりの空気を朱色に染めているかのようです。
★天拝山登山口の様子 落葉と紅葉とが辺りの空気を朱色に染めています。
2011.12.06 9:00am撮影
落ち葉もよくよく見てみると、モミジだけではありません。大きな苞(ホウ)の木の葉や黄色
のイヌビワやイチョウの葉なども混じっています。落ち葉で出来たモザイク模様の絨毯の
上をカサコソという音を立てながら歩くのも、この季節ならではのものです。落ち葉の間か
らドングリたちも顔をのぞかせています。森の中からリスでも出てきそうです。
この時期を過ぎると、もう冬一色の枯れ草色の世界で面白くないのかと言うと、「冬来たり
なば春遠からじ」のたとえ通りに、冬は冬で自然は私たちを楽しませてくれます。先日も
紅葉と落葉を楽しみながら、天拝山を散策しての帰り道に、スイセン(水仙)の花が咲き始
めているのに気が付きました。
★咲き始めたスイセン(水仙)の花 天拝山山麓にて 2011.12.06. 10:30am撮影
冬の寒さの中で、スイセンの花は春の訪れへの期待を私たちに抱かせてくれます。少し強
めの刺激的な芳香は、「春までの間、頑張って下さいね。もうすぐ春ですよ。」というエール
のようにも感じます。
スイセンの香りには思い出があります。生け花の師範をしていた祖母(96歳没)が意識の
薄れゆく中で、幼かった娘が見舞いに持参したこの花の匂いを嗅いで、目を閉じたまま、
小さな声で「ス・・イ・・セ・・ン」と言いいたのです。最後まで花を愛した人でした。スイセンが
咲き始めると、私を優しく見守ってくれた祖母のことを思い出し、心が温まります。
ミゾソバは名前の通りで小川沿いや沼沢地などの水辺、溝のあるような場所に生えます。
葉の形が蕎麦の葉に似ているので、「溝蕎麦」と言われています。私は「蕎麦」という字よ
りも「傍(そば)」の方が似合っているように思います。何故なら、溝の傍によく生えているか
らです。
★ミゾソバの花 天拝山麓の溝(ミゾ)の傍(ソバ)で 10月12日午前9時頃撮影
今朝、いつも傍を通っている溝辺にこの花が群生しているのに気が付きました。秋の青空を映
した水面に、ピンクのこの花たちが引き立ちます。思わずうっとりと見とれてしまいます。
ミゾソバに目を奪われていると、すぐそばから「私の方も向いてちょうだい!」という声が聞こえ
ました。そちらの方に目をやると、うっすらと紫色をした野菊が咲いています。咲いたばかりで
花弁も艶々しています。花の芯の黄色もコントラスト良く映えています。今が美しさ真っ盛りで
す。「それでは、はいポーズ!」ということでパチリ!何だか、野菊が満足そうな顔をしているよ
うに思えました。
★野菊の花 天拝山麓にて 10月12日午前9時頃撮影
秋を彩る花々に囲まれて、今日も天拝山を楽しんできました。天気と時間と体調の三拍子が整う
と天拝山に登っています。258mの低い山ですが、いい運動にもなりますし、自然観察を楽しむ
ことも、歴史を知ることも、・・・・。色々な楽しみに満ちています。これからは日によっては、朝霧
も楽しめますよ。是非一度遊びに来て下さい。お待ちしています。
「134本」!?これは私がこの12年間に書いた“鳥”に因んだエッセイの作品数です。『鳥信』と
いうタイトルで毎月1本書いてきました。これから、この「なかよしブログ」でも、時々紹介していこ
うと思います。
『鳥信』を書くようになったのは、私が野鳥の会の会員であることを知った友人から、エッセイを
彼が編集している冊子に書いてみてはどうかと薦められたことがきっかけです。その時の私は、
家族の病気介護のために会社を辞めて、これからどうして生きていこうかと考えている時でした。
気分転換のようなつもりで書き始めたのですが、気が付くとあれから12年!
この間、書き続けることが出来たのは、執筆している時間は日常の暮らしから解放され、その描
こうとする世界に没頭し、悩みや迷いなど忘れることが出来たからです。さらにはエッセイを書き
ながら、自分の生き方や考え方などを振り返ったり、確かめたりする機会にもなっていたからで
す。まさしく、この12年間、このエッセイと共に生きてきたとも言えるかも知れません。
では、今日は8年前(2003年)の6月27日に書いた「ホトトギス」に因んだエッセイを紹介します。
★ホトトギスの声が湖面を渡って聞こえてきます。6月14日 天拝湖(筑紫野市)にて撮影
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鳥信NO.47 「ホトトギス(不如帰)」(Cuculus poliocephalas) 2003.6.27. 長阿彌幹生
「シンプルな営み」
近くの山からホトトギスの大きな声が聞こえてくる。五月晴れの空が拡がった日だった。森の中
から、少しこだまするように聞こえてきた。今年もしばらくは、彼らの声を楽しませてもらうことにし
よう。
「目に青葉、山ホトトギス、初鰹」と歌われているように、初夏になると、繁殖のために遠く南方か
ら海を越えて、九州から北海道の山々へ渡ってくる。彼らの餌となる毛虫が一斉に姿を現す頃だ。
体長が27センチくらいでヒヨドリとほぼ同じ。全体的に灰色で覆われている。腹部には黒い横縞が
見える。「テッペンカケタカ」と聞こえる大きな声が特徴だ。
ドキュメンタリー映画を見た。世界各地でロケーションをして鳥の生態を撮影した素晴らしい映
画だった。その中に、孵ったばかりの目も開いていない雛が、他の卵を背中で押し上げて巣の外
に落としているシーンがあった。
これは鳥の雛が托卵先の巣で孵った時の場面だった。托卵とは、他の鳥の巣に自分の卵を産
み落として、孵化後はその鳥に育ててもらうことだ。ホトトギス科の四割の種はこの托卵を行う。
托卵先は種によって違うが、ホトトギスは主にウグイスの巣に托卵するようだ。
この種の雛には背中にくぼみがあって、卵を乗せやすくなっている。これで、他の卵を外に押
し出してしまう。托卵された方の鳥は、ホトトギスの雛を自分の雛だと思って、巣立ちするまでせ
っせと餌を運び続けるのだ。
子育てをしないというと、無責任とかずるいとか思われそうだが、それは人間がそのように思う
からであり、彼には疑いも不満も打算も無い。彼らはいつものように生きている。子を託したとか、
託されたとか、育ててもらったとか、育ててあげたとか、そのような思いは何も無い。自然の理に
沿って生きるシンプルな営みがあるだけだ。
今朝も遠くから鳴き声が聞こえてくる。山では、赤ちゃんホトトギスが大きな口を開けて、母さ
んウグイスが餌を運んでくるのを待っているのかも知れない。そんなことを思いながら、ホトトギ
スの声を聴いていた。
★ホトトギス
★サントリーのホームページ:サントリーの愛鳥活動のページより転載
http://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/60.html